1.セロ鞘(キャップ)は使用後は使わないでください。 

日本画筆にはセロ鞘と呼ばれるキャップが通常付いています。筆を使い始めたら基本的に使う事はありませんので、セロ鞘は捨てて大丈夫です。筆を大事にしたいと思って、使用後にセロ鞘をはめてしまう方がいますが、毛が蒸れてダメになってしまいますので、絶対に行わないでください。スケッチ等に持ち歩く際、穂先の保護のためにキャップをしたい場合は、しっかり乾燥させた上でセロ鞘の先をハサミで切って空気に触れるようにしてください。

2.布海苔(ふのり)を取る、使う前に水を浸透させる。

新品の筆は布海苔で固めてあります。ぬるま湯につけながら、ゆっくり指で穂先をほぐしてから使ってください。※布海苔は天然海藻成分ですので、人体には無害です。
初めて使う時は布海苔を取る過程で穂首にしっかりと水が浸透します。次回以降使用する際も穂先にしっかりと水分を浸透させてから絵具につけることが筆を傷めない予防法になります。乾いた状態で絵具や墨をつけると色が落ちなくなったり、膠分等の接着剤が穂の根っこで固まり、筆の寿命を縮めてしまいます。

3.筆はなるべくこまめにぬるま湯かお湯(40~60度位)で洗うのが効果的です。

化学的なものが入っているシャンプー、リンス等で洗うのは筆に悪い事が多いです。筆作りの工程「毛揉み」で毛の表面の脂分を取り除いて水や絵具を含みやすいようにしてあります。シャンプー等で毛に膜ができてしまうと筆本来の含みや降り、描き心地を損なう可能性がありますので、水性絵具を使用する筆にはお勧めしていません。

4.筆を長時間水につけっぱなしにしないで下さい。

筆洗に入れっぱなしにする等長時間水につけっぱなしにするのは避けてください。毛が蒸れて切れてきてたり、故障の原因になります。

5.使い終わった筆はよく水分を取って、タオルなどに横向けにしておいてしっかりと乾かしましょう。

日本画筆の軸の中には、麻糸で焼締めした穂首が入っています。(製造工程参照)穂が濡れたまま、筆立てにいれたりすると麻糸の方に水が流れていき、焼締めの効き目が弱くなり、脱毛の原因になります。
また刷毛や連筆のような大きなものは使用後に水分を取ったうえで、吊るして乾燥させると効果的です。
刷毛や連筆は乾燥させた後、使い始める前に金櫛を掛けて、制作時の切れ毛を取り、毛を真っすぐ整えると描き心地も良くなり長持ちします。


筆は消耗品ですが、丁寧に扱えば長持ちします。
使いづらい筆を使い捨てにするのではなく、
気に入った筆を大事に長く使って頂ければと思います。