2021.09.15

工房風景

新たな分野、世界へ向けた筆制作

懇意にしている作家の方から、特注を受けることはよくあります。
トップの写真は、特注頂いた陶器への絵付用の線描筆です。
イタチ系と羊毛系の2種類を制作しました。
筆の太さにもよりますが、特注は数十本単位でお作りします。
弊社公式HPやインスタグラムをご覧頂いている方はご存知かもしれませんが
筆は1本単位で制作することはできず、ある程度まとまった数が
一度に仕上がります。

陶画筆に使った主原料です。

↓しなやかなコシを持つイタチ毛(近年は入手が困難です。)

↓非常に含みの良い山羊毛

近年、筆職人、メーカーの減少に伴い、上記の陶画筆のように日本画以外の様々な
分野の方から「この筆を作ってくれていた職人が廃業してしまった。」
「昔と品質が変わってしまったから清晨堂で新しく作ってほしい」
等というご依頼を頂く事が増えてきています。
以下の蒔絵筆も似たような経緯で近年出来上がった物です。

三吉蒔絵

国内の筆の主な産地は、広島の熊野、愛知の豊橋、また東京です。
筆の需要の減少に伴い、筆職人は減少の一途を辿っています。
熊野や豊橋でも後継者不足の話をよく聞きますし、東京に至っては
ほとんどの筆職人が廃業してしまいました。
祖父の時代は、筆職人が三囲神社にあつまり筆供養を行ったり、
現在の東京駅の大丸の場所に筆工場があったそうです。
時代の変化に伴い、致し方ない点もありますが、技術が一度途絶えてしまうと
それを再興するのはなかなか難しい事です。

そんな中、日本画筆の制作で培った技術を、他の分野の方が必要として
下さる事は大変嬉しい事です。
またオンラインショップを始めたことにより海外のお客様が清晨堂の筆を
初めて知り、ご注文を頂くことも徐々に増えてきています。

ただ未来を悲観するだけでなく、代々伝わる日本画筆作りの技術・精神を
受け継ぎ、また改良してゆくことで、新たな分野、新たな世界に清晨堂の
筆作りを広めて行ければと思っています。

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