2021.01.13

工房風景

刷毛の品質はどこで決まるのか?③

「引きと割り」の仕立てによる効果については、ざっと以下の通りとなります。

毛板を挟む力が増す→脱毛が減る。

これは先日のブログでご説明しました。

★毛板に流し込む接着剤の塗り漏れがなくなる→脱毛が減る。

以下の写真は毛板に注射針を使って接着剤を塗布している所です。
接着剤を数回塗った後、トップの写真のように、毛板を刷毛板に挟み込み
次に締め木で締め上げます。
このことにより、接着剤の塗り漏れがなく、全体に浸透しやすくなり、
脱毛を予防できます。
ちなみにこの工程で接着剤の塗り漏れのある刷毛は使用直後から脱毛が
起こってしまいます。ピンホールのようにほんの少しでも塗り漏れが
あれば脱毛が発生してしまうのです。

↓接着剤塗布

 

↓締め木で刷毛板と毛板に圧を掛ける工程

 

毛の密度が上がる。→先が開きにくく、薄手なのにまとまりがある毛先になる。

刷毛板からの圧がしっかりかかっていると、同じ毛量でも毛の厚みは
薄くなり、毛の密度が上がります。
最近制作していて、この「毛の密度を上げる」ことはかなり描き心地に
関係しているように感じます。同じ毛量なのに、何割も厚みがあったら、
毛の密度が低く、まとまりもコシも、接着剤の浸透性も悪くなります。

弊社の場合は樫の木で作った「締め木(しめぎ)」と呼ばれる道具で、
上の写真の通り、毛板と刷毛板を締め上げているので、この効果はさらに増します。

このように、刷毛板1つで、脱毛の予防や穂先のまとまる力(毛の密度を上げる)等
様々な効果があることがわかります。

また弊社の刷毛板は斜に削ってあり、穂先の方が厚く、柄の方が薄い仕立てにして
持ちやすいようにもしてあります。

最後に漆で塗ることの効果について、次の記事で書いていきます。

 

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