2021.01.17
工房風景
【筆、刷毛共通】穂の長さ→コシ、含みへの影響
筆、刷毛のコシの強さについて、共通して言えることですが、
穂丈を短くする(短穂にする)→コシが強くなる
穂丈を長くする(長穂にする)→コシが弱くなる
となります。
また同じく含みの良さ(多さ)については
穂丈を短くする(短穂にする)→含みが少なくなる
穂丈を長くする(長穂にする)→含みが多くなる
となります。
つまり穂丈の長さの影響による、「コシの強さ」と「含みの良さ」は
反比例の関係になります。
また、通常穂丈の物は、なるべく多くの人の手に合うような規格で制作してあります。
父が「プロ野球選手の打率の反対で7割、8割の人が使いやすいような
規格で制作しなさい。それに合わないこだわりのある人は、特注で依頼を受けて
まとめて制作しなさい」とよく言っていました。
短穂特製絵刷毛は通常よりコシが強いため、「返し刷毛」等と
プロの作家から呼ばれていますが、その分、通常の穂丈のものより
含みが減ります。
ですので、最後に刷毛ムラをなくしたり等、仕上げの工程で使われる事が
多いという風に伺います。
以下は中太連筆と短穂中太連筆の写真ですが、こちらも同じ事が言えます。
懇意にしている作家から伺うと、短穂は最後の仕上げや広い面の隈取に
重宝しているとの事でした。
上記の刷毛、連筆はパッと見で穂の長さの違いが分かる例ですが、
実際に制作していると
ほんの少しの、穂の長さの調整が、大きく描き心地に影響する事が分かって
きました。
制作の終わった(焼締めの終わった)同じ穂首の、軸へ接着する長さを変えた
だけでも、コシ、描き心地はかなり変わります。
ただコシを強くしたいから、短穂にすれば良いというものでもありません。
さきほど、長穂にするとコシが弱くなると書きましたが、言い方をかえれば
抑揚がある筆になる、という事でもあります。
様々な原料のコシ、含み(例えば狸はコシが強く、含みは少なめ。山羊毛は
コシが弱めで含みは多め等。)をどのように配合し、どのような長さ・太みで
制作していくかをデザインしていく事が、筆職人にとって最も重要な事だと
思っています。